2017年10月26日
「遠州の小江戸」掛塚の文化遺産・津倉家住宅㊺―向日葵の引手

北米原産の「sunflower」は、コロンブスの大陸発見後ヨーロッパに持ち込まれ、中国を経由して日本に入って来たのは17世紀とのこと。津倉家住宅が建てられた明治22年(1889)には、かなり一般的な花になっていたはず。
俳句などの江戸時代の文学には登場していない向日葵は、明治時代になると現代のように「夏を代表する花」として多くの文学に登場するようになりました。これは、おそらく侘・寂が伝統的とされて来た和の美意識が、西洋文明と触れ合う中で、洋風の身なりや生活様式を「high collar=ハイカラ」として受け入れ、徐々に変質するようになったのと同じ傾向だと思います。
部屋の灯りとしてガス灯を引き込み、洋室を増築するほどのモダン趣味の津倉家。そんな流行の先端の和室建具が、ガス灯に浮き上がる向日葵の引手だったのではないでしょうか?