2019年11月05日
北遠の庚申信仰⑨―ふるさとものがたり天竜「庚申さまと五輪さま」

庚申さまは五穀豊穣の神さまであり、五輪さまは身分の高い人の墓といわれ、五つの丸い石が積み重ねられている。
むかしのことである。
熊平の子供たちが、堂ボツで遊んでいた。
はじめのうちは、おにごっこや、かくれんぼをしていた子供たちも、やがてそれにあきて、今度は石を拾ったり投げたりし始めた。
そのうちに仲間の一人が、
「おい、こっちで遊ぼう。」
と、五輪さまのぞばに、近寄って行った。
いつもは、お父やおっ母に、
「神さまのそばで、遊ぶんじゃねえぞ。」
と、言われている子供たちであったが、今日はそれを忘れてしまっていた。そして五輪さまの石を、落としたり、積んだりして戯れた。
さて、その夜のことである。
不思議なことにこの子供たちは、みんな高い熱にうなされた。それはそれはひどい熱で、呼ばれた医者も何が何だかわからず、首をひねるほどであった。
そこで心配した親たちが、行者に占ってもらうと、五輪さまが現れて、
「庚申さまと仲よう遊んでいたのに、なぜ邪魔をした。」
と、ひどい怒りようであった。
びっくりした親たちは、早速、五輪さまと庚申さまにお供え物をし、お祈りをして、
「これからは、二度と邪魔はいたしません。」
と、約束をした。
すると子供たちの高熱は、うそを言ったように引いてすぐに元気になったという。
この庚申さまと五輪さまは、今も熊平の堂ボツに、仲良く並んでいらっしゃるということである。(「ふるさとものがたり天竜・第6章熊地区」より)
◆ ◆ ◆ ◆
写真が、“堂ボツ”の庚申さまと五輪さまです。地蔵や馬頭観音と思われる石仏も並んでいますので、“地蔵ボツ”の呼び名も当たっているかも知れません。
いつの世でも、子どもたちは悪戯をするものと相場が決まっているようです。でも、仏様や神様に悪戯をしてはいけませんね。