2020年02月02日
「さくま郷土遺産保存館」で学んだこと㉑―唐鍬

私は、三方原台地を開墾した入植者の子孫になります。独特の赤土と呼ばれる粘り気の強い土を耕すには、「三本鍬」と呼ばれる「備中鍬」を使っていました。備中鍬は刃床部の分岐したもので、歯の数は3本のものと4本のものとがあるようですが、私が使っていたものは、すべて3本刃のもの。やや、細身で軽いものと、幅広で重いものとがあり、刃先はもちろん火入れがされていました。
私にとって「くわ」と言えば、この「備中鍬」のこと。刃と刃の間に石ころが挟まる欠点がありますが、「平鍬」に比べて軽く、刃が細いため、小さな力でも深く打ち込むことができます。
ただし、まだ土が固くて木の根などの残っている場合には「唐鍬(とうぐわ)」を使いました。形は「平鍬」に似ていますが、「唐鍬」は刃を厚く大振りに作ってあります。刃床部は曲面で、その幅が狭く、肉が厚く、堅牢。開墾や根の切断に用いられ、我が家ではタケノコ掘りには「唐鍬」を使っていました。
名前に「唐」が付いていますので、もともと中国か朝鮮半島から伝えられた鍬だろうと思いますが、おそらく日本人が使いやすいように改良され、現在に至っているのでしょう。私たちは「とぐわ」と呼んでいましたけど、北遠では「トーガ」と呼んでいたようです。
「さくま郷土遺産保存館」には、少し小振りの「唐鍬」ばかりが並んでいました。柄も私が使っていたものと比べると短めで、刃と柄との角度が小さくなっていましたので、木の根の多く残る山間地の焼畑に向いた鍬なのかも知れません。ただし、佐久間では「唐鍬」しか使わないのかと思うと、西渡(にしど)の「片桐鍛冶店」には新品の「備中鍬」が並んでいました。
そう言えば、ほかにも、「鋤簾(じょれん)」に似た「かっさらい」と呼ぶ「草取り鍬」や、「ほぐせ」と呼ぶ「草取り金具」も重宝しましたが、これらは方言でしょうか?