
河内浦部落へ入ろうとする入口に、外来者をこばむような恰好で、家屋ほどもある大きな石が路傍に腰をすえている。これも山姥伝説のからんだ石で、ある時村の人達がお祭りをして楽しんでいると、山の上の臼ヶ森という所に住んでいた山姥が腹を立て、この巨岩を山上から転げ落したのだそうだ。こんな巨岩が何の予告もなく山から落ちて来たなら、普通は神の怒りとでも受け取るものを、山姥の呪詛に帰したのは、やはり山姥の呪術的な行動が、この人々に深い印象を与えていたからではないか。(内藤亀文著「ふどき」9.峠と谷(3)山住神社より一部引用)
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これが、河内浦(こうちうれ)に伝えられた昔話。県道389号水窪森線脇には、今でもこの岩があります。山住峠、門桁集落と水窪中心部とを結ぶ大切な生活道路であるこの道は、水窪河内川に沿い、岩を発破で開削しながら延びていますが、かつての道は布滝から山に上がり、臼ヶ森を迂回して河内浦に辿り着いていたはず。現在の川沿いの道は、「布滝隧道」が出来てからだと思います。
この大きな岩は邪魔な存在ですが、岩の外側には川が流れていますので、仕方なく内側を切り開いて道にしたのでしょう。