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2019年05月07日

「民俗の宝庫」水窪を訪ねて⑨―ナリ木責め

栃の木 遠州常民文化談話会編『水窪の民俗』に特別寄稿を寄せた民俗学者・野本寛一先生の「山の民俗思想―自然と共に生きる作法」の項、「栃の実の豊饒予想」には、水窪町大野の水元家で今でも行われている「ナリ木責め」の風習が紹介されています。

 大野と言えば、山桜のある大野分校跡で知られる集落。水元さんのお宅は、分校のすぐ南側にあります。

 『水窪の民俗』によれば・・・

 ②水元家の南三〇㍍の南ン沢に栃の木がある。その栃とコエヤシキ(月小屋)の前の柿の木のもとで一月一六日に次のようにした。家の男二人が木の根のもとで、一人がヨキを持って「ナルカ ナラヌカ」と唱えるといま一人が「ナリマス ナリマス」と応じた。木の根元には白粥を供えた(水窪町大野 水元な於ゑさん 大正五年生まれ)。

 これが、実のなる木に対して行われる小正月の風習。主に、屋敷近くの柿、梨や栗などの果樹を威嚇し、豊産を約束させるのですが、水窪には栃の実の食習があり、栃の木にも「ナリ木責め」の風習が残されて来たのです。

栃の木 写真が、水元さんの家の栃の木。道から少しだけ上がった斜面に育ち、辺りを睥睨するかのような巨木です。この木にヨキ(手斧)1本で立ち向かっても叶うはずはないのですが、「ナリマス ナリマス」と応じるとはよくよく人間と樹霊との良い関係が保たれている証拠。まさに、野本先生の言う「自然と共に生きる作法」が守られているのが水窪です。

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