2018年12月08日
私が出会った力石②―磐田・増参寺の力石

むかしのことでした。この増参寺の少し南に、あみだ沢という所があって、そこに小さな、あみだ堂がありました。お堂には、堂守が一人いて、近くの人たちはこの堂守を、「六部さま」と言っていました。六部さまは大へんな力もちでした。
ところで、そのとなりの村の、匂坂新田の養明寺というお寺にも、これもまた、すばらしい力のある、元気な和尚さまが住んでおりました。二人は、出合うと、いつでも、「おい、角力(すもう)をやろう」と、角力をやって、力くらべをするのでありました。
ある時二人は、「おい、どっちが力があるか、一つ本当のところをくらべて見ようや」「うん、やろう。また角力か」「いや、今度はあみだ堂の石を、天竜川川原で、向こう岸に投げ合って見よう」「なるほど」と、話し合って、あみだ堂にある大石を、天竜川川原に持って行きました。そして、広い川の両岸に分かれて、投げ合う事としました。
まず初めに、和尚さまが東から西へ、次に六部さまが西から東に投げましたが、両方とも、川をこして向こう側に、ぽんととんで、ころころところがりました。
「やはり、同じだな」二人は、笑っていました。
それを見た増参寺の和尚さんは、「ではその石を、わしにくれ」と、増参寺の前に運んで来ました。それがこの力石なのです。
こうしたえんで、六部さまの死んだ後、六部さまの石碑は、増参寺にたてて、今ものこっております。(御手洗清著「静岡県西部のおもしろい伝説」「大石で力くらべ」より)
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増参寺の力石は、かなり大きな石。これを天竜川の向こう岸まで投げるなんて人間業ではありません。