2022年02月06日
旧磐田郡豊岡村万瀬を歩く⑤―中遠昔ばなし第27話「いぼ石」
この若者の手には、毎日の山仕事で、たくさんのいぼができていました。若者は、野草のつゆをつけたりしましたが治らず、ほとほと困っていました。そんなある夜・・・
「われは、三森神社の使いである。その方は正直者でよく働く。父親を大切にし村人にも親切で感心なものである。汝の右手のいぼを治してやる。お宮の前の丸くて大きな石を割り箸で撫でよ。願い事をかなえてとらせる。ゆめゆめうたがうことなかれ…」と夢枕にたった。
若者は、この話を半信半疑で父親に話すと「それは、きっと神様のお告げである。とてもありがたいことだ。!」と大変よろこびました。早速、その石を撫でた若者の手は、10日もするとすっかりよくなりました。
この話は、あっという間に村中に広まり、たくさんの村人たちがこのお宮にお参りをしました。
それから、村人たちは、この石を「いぼ石」とよんで今でも大切におまつりしています。(「豊岡物語」より)
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顔を近づけてみると、この「いぼ石」は角の取れた小石が集まって出来た含礫泥岩。一度地上に現れた石が割れ、川を流れ下って角が取れて丸くなった小石が海底に堆積し、再び固まって出来た石です。
これなら、強くこすれば疣(いぼ)に似た礫がポロリとはがれることも。つまり、「いぼ石」とは含礫泥岩ならではの特性を表した逸話。ちなみに、ここの字名も「疣石」だそうです。