2020年05月11日
ステイホームで「西国巡礼」⑨―千手観音

ずーっと遠い昔、一人の仏がこの世に生まれました。釈迦(しゃか)はこの仏をたいそう可愛がって、もろもろの衆生のための広大な教えを説き、金色の御手で頭をなでながら言います。「おまえは、この教えを持って未来悪世のすべての人々を救済しなさい」と。
初めて世に現れ、尊い教えを聞いて感激した彼は、心を躍らせて答えます。
「世尊よ。もし私に世の人を益し、安楽ならしめる力があるとお考えでしたら、たった今、私の身に千の手と千の眼を下さい」
言い終わるや否や、たちまち彼の体に千の手と、その手に一つずつの眼が生じ、千手観音が誕生します。
「千手観音」の誕生話―『千手千眼観音経』の経文を米田氏独特の語り口で紹介しています。
感動的に誕生した「千手観音」ですが、いざ石に彫るとなると、実に厄介です。もちろん、千もの手を彫ることなど不可能。そのせいか、石仏の中に「千手観音」を見かけることは意外と少ないのですが、浜松市天竜区春野町堀之内の瑞雲院の山門前に佇むこの石仏は「千手観音」に違いないと思います。
ヒントは、台座に彫られた「四」の文字。「西国三十三箇所」の4番札所、大阪府和泉市の「施福寺」の本尊は「千手観音」。手は4本だけ彫られています。
*記事は「出かけよう!北遠へ ふるさと散歩道」に掲載したもの。ステイホームのため、過去記事を再掲載させていただきました。