2020年05月07日
ステイホームで「西国巡礼」⑤―不空羂索観音

そのヒントは、台座に彫られた「九」の文字。「西国三十三所」の第九番札所は、奈良市の興福寺「南円堂」。ご本尊は「不空羂索(ふくうけんさく)観音」です。
「不空羂索観音」は、多面多臂の変化(へんげ)観音。この石造は多面八臂のようです。「羂索(けんさく)」「錫杖(しゃくじょう)」「払子ほっす)」「蓮華(れんげ)」などを持つとの説明通りの持物を持っています。右の上の手が持っているのが「錫杖」、真中の手が持つのが獣の毛などを束ねて柄をつけた大きな筆のような形の「払子」。左手の上が「蓮華」、真中の手が持つのが鳥獣魚を捕らえる縄「羂索」。まさに、まさに「不空羂索観音」です。
もう少し詳しく調べると、「羂」は網、「索」は魚の釣り糸のこと。網を張って鳥をとらえ、糸を垂れて魚を釣るように、人々を救うのだそうです。この観音を拝むと病や水火の難を逃れるなど20種の利益(りやく)があるとか。
「四国八十八所」に比べれば、近いのですが、それでも、「西国霊場」を完歩すれば、その一番(和歌山県「那智山寺」)から三十三番(岐阜県「谷汲山」)まで、札所を巡る巡礼道だけで約1000㌔。さらに往復の距離がプラスされる気の遠くなるような長旅です。苦労覚悟で出かける「巡礼行」は、どうやら物見遊山だけではなさそうです。
今後の人生の中で、私が巡礼に出かける機会はないかも知れませんが、せめていつかは巡りたいと願い、両手を合わせることにしました。合掌!
*記事は「出かけよう!北遠へ ふるさと散歩道」に掲載したもの。ステイホームのため、過去記事を再掲載させていただきました。