龍神伝説の岩水寺を訪ねる⑦―袖が浦物語

AKG(秋葉観光ガイド)の斉藤さん

2021年07月27日 05:07

 今から千数百年以上も前の天竜市は、鹿島のあたりから南は波の荒い大海で、『袖が浦』(別名、岩田の海)と呼ばれていた。
 この袖が浦の西岸、船岡山(浜松市半田町)と東岸、匂坂(豊田町)を結ぶわたし船は一日に一回は通ることができるけれども、それ以上は決して渡りきることができないと言われていた。しかし何人かの船頭や若者は、
「そんなばかなこん、あるはずがねえ。」
とばかりに船を出したが、さかまく荒波に船をひっくり返されて、みんな帰らぬ人となった。
「袖が浦には、おそろしい赤蛇神がいるそうじゃ。」
「赤蛇神は袖が浦の主だげな。」
 人々はそう言って恐れ、一日に一回以上は決して船を出さないようにした。東海道上り下りの旅人たちは、大変に困った。

 時に延暦十二年(七九三)、桓武天皇は、将軍坂上田村麻呂に、えぞ征伐を命じられた。家来を引き連れて都をたった田村麻呂は、やがて袖が浦の西岸、船岡山にやってきた。
 ここで赤蛇神のうわさを耳にした田村麻呂は、
「そんなばかなことが、あるものか。」
と、これを意としなかった。
 さてその夜、将軍の夢の中で、岩水寺の薬師如来から、あるお告げを受けたのである。勇気づけられた田村麻呂は翌日、おそれる船頭を励まして船を出し、難なく海を乗り切った。=②へつづく=(「ふるさとものがたり天竜・第1章二俣地区」「袖が浦物語」より)

     ◆       ◆       ◆       ◆

 古い絵葉書は「岩水寺山上ヨリ見タル遠景」は、天竜川方面。まさに「袖が浦(岩田の海)」だった辺りを眺めた写真です。

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