2018年03月27日

遠州の龍神伝説③―新宮池

新宮池 すわ湖の湖の水がせきを切って流れくだる大天竜川にそって南信をくだりますと、まず伊那郡の深見の池の伝えが、その最初の問題をあたえてくれます。―――その池の底がすわ湖に通じていて、明神が遠州の桜が池においでになる第一の休所であるというそのことです。―――そうした流れをくんで静岡県にはいって磐田郡の水窪町の池の平は第二の休所で、この池の平は海抜七〇〇米の山頂のくぼ地で常には水もありませんが、七年ごとにわきだして七日間水が満々とたたえられたという奇ずいを伝えています。この奇ずいはすわ明神がその間あそばれるからだとも伝えられています。―――春野町和泉平(いずみだいら)の新宮池もすわ湖に通じているといわれ、熊切筏戸(いかんど)の山の上のにいけ田ももとは池で二匹の大じゃがすんでいたが後に新宮池(家山の池)に行ったとも人々は伝えています。

新宮池の夏まつり そのほか榛原郡の家山の池もすわ湖に通じているといわれます。くだって天竜市二俣にもすわ湖に通ずる洞穴があり、今でも清水がこんこんとわいています。明神の通われる桜が池は今さらいうまでもなくすわ湖と深い関係があると伝えられています。いずれも皆大じゃの伝説を持っていることもみのがせませんね。水神の祖出雲の神々の系統をひくすわ湖の信仰がいつの時代か天竜川にそって遠州に伸びてきたものではないかと思います。

 「池の平」、「新宮」、「にいけ」(あるいは三池)等皆山頂にあり、すわ湖の水に通ずるという奇ずいを説きやすい条件もあるわけですし一層信仰を深めるものにもなったのでしょう。新宮の祭も一種の船祭で、すわの御船祭と強いていえば共通点がないとはいえません。(ふるさと春野の伝説「諏訪湖に通じる池」より一部引用)

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新宮池の夏まつり 遠州の龍神伝説の紹介は、御前崎市佐倉の「桜ヶ池」から、浜松市天竜区春野町の新宮池に飛びます。標高500メートルの高所に水が湧いた池で毎年7月に開催される「新宮池の夏まつり」では、「桜ヶ池」と同じように船が浮かべられるのも、共通のルーツのようなものを感じさせられます。

 私たちは、伝説や言い伝えが、ある地域に限定された特別のものではないことを知っています。これは、交通の便や情報の伝達が現在ほどスムーズではない時代ではあっても、地域が決して文化的には孤立してはいなかったことの証拠です。

 「浜松市の最北端」と思っていた水窪が、実は御前崎から諏訪へと続く長い長い「塩の道」の中継点であることに気づかされます。むしろ、山の文化と海の文化の交差点として、バラエティーに富んだ文化が集積した地であったのです。

 遠州の龍神伝説を知るにつけ、私たちの考え方が、いかに都市中心的で片寄ったものであったかが反省されます。地域に「端」はあっても、人々の文化や暮らしには「端」などないのです。



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