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2019年04月20日

春野町平木の常夜燈に刻まれた「御大典紀念」

平木の常夜燈 浜松市天竜区春野町平木の路傍に建つ常夜燈。火袋下の中台、右から左に「御大典紀念」の文字が刻まれています。そして、裏側には「大正四年十一月」の文字。大正天皇が皇位継承を公示する即位の礼が、大正4年(1915)11月10日に行われていました。

 明治45年(1912)7月30日、明治天皇の崩御を受けて、第三皇子の「大正天皇」が皇位を継承。元号は翌日に明治から大正へと改元。ただし、即位の礼は大正4年に京都・紫宸殿で行われたのです。

 即位の礼の後に、五穀豊穣を感謝する最初の新嘗祭(にいなめさい)である大嘗祭(おおにえのまつり)が執り行われました。即位の礼、大嘗祭の儀式を合わせて「大典」と呼び、全国各地で花電車や提灯行列などの奉祝行事が催されました。

 そんな「御大典」の報は、もちろん春野の山里にも届いていました。

1 いのち短し 恋せよ乙女
  朱き唇 褪せぬ間に
  熱き血潮の 冷えぬ間に
  明日の月日は ないものを

2 いのち短し 恋せよ乙女
  いざ手をとりて 彼(か)の舟に
  いざ燃ゆる頬を 君が頬に
  ここには誰れも 来ぬものを

3 いのち短し 恋せよ乙女
  黒髪の色 褪せぬ間に
  心のほのお 消えぬ間に
  今日はふたたび 来ぬものを

平木の常夜燈 吉井勇作詞、中山晋平作曲の『ゴンドラの唄』が世に出たのが大正4年。黒澤明監督作品『生きる』で、志村喬演じる主人公が雪の降る夜ブランコをこぎながら、この歌を口ずさむシーンは日本映画屈指の名場面として伝わっています。奉祝に浮かれる世の中と、『ゴンドラの唄』に貫かれたヒューマニズムへの思いとの間に、異質なものを感じてしまうのは、私だけでしょうか?

 基礎部に「平木青年會」とあるのも、ちょっと変わっていますが、「秋葉山常夜燈」などと刻まれていることが多い竿の文字も「國家安全」とは、ヒューマニズムよりも軍国主義への後戻りの出来ない流れを感じさせられます。逆に言えば、この常夜燈が秋葉信仰ゆかりのものかどうかが分かりません。近くにいた人に聞いてみたのですが、「さあ?」と、残念ながらはっきりした答えは得られませんでした。

 そして、近頃でも世は改元に浮かれ、「天皇陛下万歳!」を叫ぶ聴衆の姿がテレビの映像で流されています。改元の何がめでたいのか?私には理解できません。



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