2020年03月11日
遠山郷に祀られた神仏①―小池沢水神

農耕民族にとって「水神」と言えば、米の栽培に欠かせない水の確保を願い、水源地や用水路沿いに祀られることが多い神。しかし、もう一方では、水害から逃れることを願って祀られたケースもあります。
この路傍に立つ「小池沢水神」の神号碑の願いは後者でした。
隣りには「小池沢水神」と並び「秋葉神社」とも彫られていましたので、明治以降に建立されたものと思われますが、この石碑の意味について、現地に小さな解説板が立ち、「町を守る神々 普段は小さな小池沢だが、度々氾濫し町を襲ったため水神を祀った」と書かれています。
小池沢は、天竜川の支流である遠山川へと流れ込むほんとうに小さな流れ。この沢が、氾濫を起こし水害が発生したなどとは信じられないのですが、おそらく、当時の遠山の山は無計画な樹木伐採が進み、下流に木材を流し、一旦大雨が降れば山は天然のダムの役割を果たさず、一気に山間の居住地へと流れ下ったのでしょう。
家屋を壊し、家財を流し、「暴れ川」と恐れられた天竜川と同様に、幾度となく水害の被害をもたらしていたものと思われます。
そんな災害の歴史を忘れず、後世に伝えようと考えたのが、この石碑。単に「水神」と刻むだけではなく「小池沢水神」と具体的な沢の名を入れたのには、そんな理由があったのでしょう。
すぐ隣りには、「水神 水天宮 山神」と刻まれた石碑も立っていました。