2020年05月07日
上阿多古・長沢の長月寺を訪ねる①―「木造薬師如来坐像」

長月寺の薬師如来坐像は膝裏の銘文により製作年次が十六世紀中頃であることがわかり、表現も当時の特色がよく伝えられていて貴重な仏像である。
松材による一木(いちぼく)造りで、内刳(ぐり)も比較的浅いため、小像ながらすこぶる重量に富み、彫刻としての力強さと生命感のある堂々たる像容を完成させている。頭髪には群青、眉と髭を墨描きし、口唇に朱を施す以外は素地のままで仕上げている。
同像が長月寺に奉安されるの至った経緯についてはあきらかではないが、かつて境内の薬師堂の本尊として祀られていたという。また作者の小嶋道法(こじまどうほう)は、三ヶ日町利正院の阿弥陀像の作者である小嶋重國(こじましげくに)と同系の仏師とも推定されている。
地方作らしい粗雑な一面もうかがわれるが、全体の作風はすぐれ、天竜市内における室町時代の諸彫像にあって、この期の掉尾(とうび)を飾るにふさわしい逸品である。
像 高・・・四十センチメートル
時 代・・・室町時代(弘治三年・一五五七年)
銘 文・・・「奉刻彫薬師如来像一軀
歳日弘治参年丁巳年三月廿八日
國續小嶋道法 願主敬白」(膝裏墨書)
指定年月日・・・昭和五十九年十一月十三日
昭和六十年三月 浜松市教育委員会
浜松市天竜区長沢の長月寺境内に建てられた看板。「浜松市教育委員会」とはなっていますが、当然、旧「天竜市教育委員会」によって建てられたものです。
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2枚のモノクロ写真は、住職から見せていただいたもの。調査時に撮影されたものとのことで、膝裏の墨書き文字も写されています。

まさか、木造薬師如来坐像を間近に拝むことができるなんて。ここからでも十分にご利益がありそうです。ありがとうございました。実は、長月寺は、私のご近所の奥さんのご実家だったんです。
*記事は「出かけよう!北遠へ ふるさと散歩道」に掲載したもの。ステイホームのため、過去記事を再掲載させていただきました。