2020年07月15日
伝説の地「竜戸」を訪ねる①―竜の玉が落ちた岩

しかし、それから女房はしだいにやせ細り、ときどき血を吐くようになりました。不思議なことに、その血は下に落ちる前に何かに吸い込まれるように消えてしまいます。
これは何かがとり憑いたに違いない・・・
そう思った猟師は、あるとき女房の口から落ちる血が消えてくあたりに山刀を振りました。しかし、猟師の手元は狂い、女房の脇腹へと切り込んでしまい、やがて女房は息絶えました。
それから15年、蛇を相手に遊んでいた娘も大きくなりましたが、猟師は病気がちで、狩りもままならず、やがて女房と同じように血を吐くようになりついには衰弱して世をさりました。そして、猟師の死と同時に蛇も姿を消しました。
ひとりぼっちになった娘は、ある夜、あの蛇の夢を見ました。
昔、お前の父に牙を抜かれ竜の力を失った恨みで、お前の両親を苦しめたが、お前には何の恨みもない。これからはお前をしあわせにしてやる。竜の玉が落ちたところに行ってそこに住むが良い。
翌日、娘は川の淵に竜の玉をみつけ、そこに小屋を作って住み、のちに良縁を得て、家も栄えたということです。
以来、その地は竜戸と呼ばれるようになり、今も竜の玉が落ちたと言われる岩が静かにたたずんでいます。どんとはらい。(「日本の伝説30 静岡の伝説」より)
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中でも「竜戸(りゅうと)由来」は不思議な話。しかも、「竜の玉」が落ちたと言われる岩が残っています。これは、一体何?
「明治六年十二月廿日官許」とされる古地図「遠江國全圖」にも、「竜戸」の地名が記されています。
*記事は、私が書いていたNPO「天竜川・杣人の会」のブログ「出かけよう!北遠へ ふるさと散歩道」に掲載したもの。同ブログは終了しましたので、過去記事を再掲載させていただきました。