冷泉・鉱泉跡を訪ね、旧磐田郡敷地村へ⑤―中遠昔ばなし第4話「虫生の湯」
昔、豊岡の山の虫生の村に、皮膚病に悩む男がいました。ある日、紀州の熊野権現さんにお願いするといいと聞いた男は、さっそく熊野へ参拝。近くの温泉で療養すると、本当に病は治ってしまいました。
男は大喜びしながら考えました。わしと同じ病気で悩んでいる村人は沢山いる、この湯が村に出たならなぁ、と。そして、熊野さんに一心に祈りました。するとある夜、夢の中に権現様が現れて、「汝の家の南の山に煙が立ち登る。その下の泉を掘ってみよ」と告げました。
家に帰ると、南の山にたしかに紫色の煙が立っています。行ってみると、藪の中に冷泉がわいているではありませんか。この水を湯にわかして浴びた村人たちも、たちまち病気が治ってしまいました。評判は、村の外にも伝わり、各地から人々が集まって浴舎もできました。こうして虫生の温泉は、江戸時代の終わりまで湯治客で賑わったのです。(「豊岡物語」より)
◆ ◆ ◆ ◆
県道283号を北上し、大平の分岐点に建てられている「大平の案内」の看板には、次のような記述が見られました。
「大平(元御湯平) 天平時代から御湯平村として○○ 家康 大平村に改める」
行基や家康の逸話が真実かどうかは不明ですが、虫生(むしゅう)には熊野神社が祀られています。昔話の逸話と関係があるのかも知れません。
関連記事