木曽路・奈良井宿を歩く㉑―庚申塔
津島神社御神木とされる赤松の前に小さな祠が建てられ、その隣りに「庚申」と刻まれた文字碑が並んでいました。同じような庚申塔は奈良井宿の外れ、鎮神社の手前にも。こちらの庚申塔は、「庚申」の文字碑の両隣りには庚申仏である青面金剛像も。
庚申信仰は中国より伝来した道教に由来し、長く庶民の間で続けられた民間信仰で、庚申の日に夜を徹して朝を待つ「庚申待ち」は集落を挙げて行われ、数多くの庚申塔が建てられて来ました。道路脇に建てられることが多かった庚申塔は、拡張整備工事などによって撤去されるものもありましたが、奈良井宿のように一ヶ所に移転されることもあったようです。
ダジャレのつもりではありませんが、甲信地方で見かける庚申塔の「庚申」の文字は、筆痕を細部まで彫られているのが特徴。奈良井宿の庚申塔も、行書体の筆のかすれ痕まで忠実に再現しているように見えます。
浜松市天竜区の光明寺境内下に建てられている「從是光明山道(是ヨリ光明山道)」の石碑にもよく似た彫り跡が見られますが、文字のはらいのかすれ痕まで刻むのは、かなりの技術力が求められたことでしょう。
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