静岡文化芸術大(浜松市中区)の学生がこのほど、長野県境の同市天竜区水窪町で3年かけて取り組んだ「昔話採録調査」を終え、このうちの82話を「みさくぼの伝説と昔話」(A5判163ページ)にまとめた。昔話を語ることができる伝承者が減少する中で、指導に当たった文化政策学部の二本松康宏教授は「語りのままの文化遺産を残せたことは意義深い」と成果を強調する。
採録調査は二本松ゼミの学生が2014年度に始めた。方言や語り口に修正や創作を加えず、そのまま本に掲載する手法にこだわった。電車とバスを乗り継いで約2時間半かかる水窪町に30回近く足を運んで補足調査を繰り返し、語りを丁寧に文字に起こした。話者の顔写真や情報、地区の歴史、産業も載せた。
文化政策学部4年の東美穂さん(23)は「話をうかがってから1カ月以内に亡くなった方もいた。完成した本を見せられないのが残念」と感謝の気持ちを表した。
日本昔話学会員でもある二本松教授は「文化を残す学生の取り組みは注目され、学会でも高い評価を受けている」と話す。その上で「この本を水窪町の教育現場でも活用してもらい、語り継ぐきっかけになれば」と期待を込める。
学生らは水窪町地域の採録調査を基に、これまでに「水窪のむかしばなし」「みさくぼの民話」を出版していて、今回が3冊目となった。山間の小集落から中心部まで町内全13地区を回り、16年度は学生6人が中心部の小畑、神原地区などで聞き取りを進めた。
昔話の聞き取り調査は継続する計画で、17年度は同区龍山町で昔話の採録調査を行う。(「静岡新聞」より)
北遠各地に残る伝説や言い伝え。龍山の次は、佐久間の調査をお願いします。