さらに、座敷に飾られている扁額に注目してみます。
書かれている文字は「游於藝(げいにあそぶ)」。「論語」述而篇の一節で、「子曰 志於道 據於徳 依於仁 游於藝」(子曰く 道に志し 徳に拠り 仁に依り 芸に遊ぶ)の3文字。ここで述べられている「藝(芸)」とは礼(儀礼)、楽(音楽)、射(弓術)、御(馬術)、書(習字)、数(算数)の六芸を指しています。
この書を書いたのは「敬宇」、つまり明治の思想家・中村正直。幕府のイギリス留学生監督としてイギリスで学び、帰国後は静岡学問所の教授となり、田代英作は英語を学んだとのことですので、「游於藝」が書かれたのはその縁あってのことでしょう。