瀬尻森林鉄道について④―たかが廃レール、されど廃レール
これまでに、ずい分多くの赤錆びたレールを見てきました。「たかが廃レール。鉄屑じゃん」と言われる人もいらっしゃるとは思います。
これらのレールには、鉱石を運び出すために敷設された軌道用のものもありましたが、その多くは、かつて「天竜美林」の良材を運び出した森林鉄道・森林軌道に使われたもの。樹齢40年、50年の杉やヒノキを伐採し、ワイヤーを使った索道や木製の橇「木馬(きんま)」を使って軌道敷まで下ろし、鳶口を操って台車に乗せ、レールの上を鉄の車輪を擦らせながら川岸近くの集材所まで運ばれました。
そこから先は、筏に組んだり組まなかったり、大量の木材が川を流れました。
その後、道路が拡張され、運搬用のトラックのパワーが増し、森林鉄道は役割を終え、ダムができることにより川を流れる木材も姿を消しました。
運搬システムの近代化により、木材の供給は効率化されました。林業従事者の負担も減るとともに、木材需用が増加したのですが、効率化の行き着く先は外国産木材の輸入。現在の北遠林業の不振へと流されて来ました。
「たかが廃レール」ではありますが、「されど廃レール」。効率化と過剰なコスト意識がもたらした世界は、私たちが望んでいた理想とはかなり違っていたような気がします。
前回の写真は右肩下がりのレールでしたので、せめて今回は右肩上がりで撮影してみました。
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