旧「袋井運送会社」のイメージを残した「駿河銀行袋井支店」
JR「袋井駅」北口前にあるレトロなビルはスルガ銀行袋井支店ですが、玄関には旧商号「株式會社 駿河銀行袋井支店」のまま。赤煉瓦に白い花崗岩でアクセントを付けたデザインは、東京駅を設計した辰野金吾が好んだというクイーン・アン様式の外観です。
このビルは昭和63年(1988)の駅前拡張に伴って移動し、古いビルのデザインを残して再建されたもの。元々のビルは、大正7年(1918)に袋井運送会社(のちに日本通運)の社屋として地元袋井の清水義直によって建築され、左官として工事に参加したのは浜松の松浦勝蔵。同じ袋井の可睡斎にある護国塔建設にも参加した職人です。
本場イギリスでクイーン・アン様式が生み出されたのは、18世紀前期のアン女王(1707~14)の時代でしたが、古典的なデザインとして流行したのは19世紀中頃。19世紀後半にはアメリカでさらに流行・発展し、日本へはイギリス留学で近代建築を学んだ辰野金吾が取り入れたスタイル。
当時の日本人の目には最先端の西洋建築と映ったのかも知れませんが、欧米においては復古調の歴史主義建築だったのです。
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