部落の人々の日常食は雑穀と芋類で、米を食べるようになったのは、やはり配給制度以後のことである。里芋やじゃが芋はゆでて串に刺し、味噌をぬって炉端にさしつらねいつでも食べる。山村特有の芋田楽というのである。そばは粉にしてまるめ、炉の灰の中に埋めて焼き、焼けると灰を手のひらでぱんぱん叩き落としてそのままたべる。これをそばぼっとりと言っている。
こういう食べ物を客などにすすめる言葉が愉快である。里芋や団子には「もちっと、ころばせネ」と言い、うどんやそばの時は「のらせネ」。そばぼっとりには「立てネ」と言う。もお少し召し上がれと言う意味だが、物によって転ばせとか、立てよとか使いわけるのだが、表現が端的で、無邪気でおもしろい。(内藤亀文著「ふどき」9.峠と谷(8)奥地部落より)
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ここで書かれている「芋田楽」というのは、「串芋」のことでしょうか? 1枚目の写真は里芋、2枚目は海老芋、3枚目はジャガイモ(水窪じゃがた)です。
どれもこれも、美味しそうでしょう?茹でてから串に刺して焼き、味噌ダレを付けます。味噌が焼ける匂いが香ばしく、ホクホクの芋の味は格別です。
北遠を代表する味と言えば、五平餅と並び、この「串芋」が必ず上位に入ってくるはずです。「もちっと、ころばせネ」。