江戸時代、醫王寺では「刺なし山椒」が育てられ、徳川家に献上されていた、との話を聞きました。「刺なし山椒」は、今でもあるのでしょうか?
醫王寺の境内に自生と思われる山椒の木はあるのですが、当然ですが枝には鋭い刺があります。ところが、赤い実を付けているこの1本には棘がありません。これこそ、「刺なし山椒」に違いありません。
「刺なし山椒」の本当の名はアサクラザンショウ。兵庫県養父市八鹿町朝倉で多く栽培されたことから「朝倉山椒(アサクラザンショウ)」と名付けられた山椒の品種です。
山椒は雌雄異株ですが、辺りに別のアサクラザンショウは見当たりませんでしたので、もしかしたら雌株のアサクラザンショウに雄株の山椒が受粉し実が付いたのかも知れません。
山椒は香辛料のイメージが強いかも知れませんが、抗菌や回虫駆除などの薬効がある薬草。それを知った人が、薬師如来を本尊とする醫王寺へアサクラザンショウを持ち込み、栽培するようになったのだと思われます。