庚申寺の山門をくぐり、左手に見える大きな建物が庚申尊天を祀った拝殿ならぬ庚申堂。庚申信仰とは、60日ごとに巡ってくる庚申(かのえさる)の日には、人間の腹にいる三尸(さんし)の虫が抜け出し、天帝にその人の罪を告げ、天帝に罪が明らかになると、その人は命を奪われるので、その夜は眠らずに身を慎んでいなければならないとして、講の者が集まり徹夜で過ごす「お日待ち」。
中に入ると正面には「請雨閣」と書かれた扁額が掲げられています。「請雨(しょうう:せいう)」とは雨乞いのこと。
いつしか庚申信仰は農業神と結び付き、「請雨閣」の扁額を見上げれば、日照りに困り、雨乞いのために、このお堂に集まってお祈りした農家の人たちの顔が浮かんで来ます。
今では庚申祭を催す地域も少なくなってしまいましたが、かつて娯楽がなかった田舎では徹夜で飲み食いする機会である庚申祭を楽しみにしている人たちも大勢いました。私が生まれ育った地域でも庚申祭は廃止され、日本全国、地域のつながりが希薄になっていることへの危機感を覚えています。