県道389号水窪森線の小石間トンネルは、途中に退避所が設けられている狭い狭いトンネル。入口には「ゆずりあいトンネル」の表示板が掲げられています。対向車のライトが見えたら、入るのを遠慮するか、待避所へ。この「ゆずりあい」の気持ちがなければ、このトンネルを通る資格はありません。
全長661メートルと狭くて長いこのトンネルには、実は、こんな歴史がありました。
昭和の初め頃、気田川では電力開発が盛んに行なわれました。昭和4年(1929)「気田水力発電所」、昭和13年(1938)に豊岡水力発電所が操業開始。その資材や伐採した木材を輸送するため、地元の森林組合が篠原起点に森林鉄道を建設。後に延長され東京営林局気田森林鉄道となりました。
小石間トンネルは、その気田森林鉄道と地元の生活道路が兼用するトンネルとして建設されたもの。人も通るため、鉄道の線路はトンネルの中心より片側に寄って敷設されていたため、大きな木材を積んだ運材車がトンネル内壁のぶつかり立ち往生したことがあったのだとか。現在の狭い狭いトンネルは、これでも拡張されたものです。
トンネルの入口には、開通を記念し、紀元2600年(昭和15年、西暦1940年)に「小石間隧道」の碑が建てられ、その裏面には、建設当時の苦労が刻まれています。