北遠の庚申信仰⑭―庚申仏が掲げる「法輪」
秋葉山からの帰り道、林道を通り犬居城の脇を抜け出てきたのは春野町領家の原の集落。庚申堂の小さな祠が、私たちを迎えてくれました。
そこで、同行の一人から質問。「ねえ、ねえ。これって何を持ってるの?」。持物(じぶつ)は、その仏を象徴しする物。ただし、同じ仏ならすべて同じ物を持っているかと言うと、そうとは限りません。この庚申仏(青面金剛)の右手には、錫杖(しゃくじょう)、羂索(けんさく)、三鈷杵(さんこしょう)を持っているようです。そして、左手には、法輪(ほうりん)、払子(ほっす)、五鈷鈴(ごこれい)を持っているようですね。
次の質問。「この輪は、船の蛇輪みたいなもの?」。いえいえ法輪とは、「仏法が人間の迷いや悪を打ち破り追い払うのを、古代インドの戦車のような武器(輪)に例えて言ったもの」。「投擲武器のチャクラムのこと」とも言われていますが、いずれにしても人間の迷いを攻撃するため、庚申仏に持たせた物のようです。
我々凡人には、難しい話なりそうです。如意輪観音が持っている如意輪も法輪。インド国旗に描かれている輪も、「チャクラ」と呼ばれる法輪です。
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