私が出会った狛犬たち⑨―項を垂れた狛犬
浜松市天竜区柴にある八王神社の慰霊碑の前、向かい合う1対の狛犬が奉納されています。
獅子の首には飾帯といわれる首飾りや鈴が飾られ、口の中や目が赤く彩色されていますので、慰霊碑が建立された昭和48年(1973)頃に建立された、比較的新しい狛犬と思われます。
向かって右の狛犬は、左前足で腹を見せて上を向いた子犬を押さえ、左の狛犬は右前足で鞠を押さえています。
左右の狛犬はともに口を開き、阿吽の組み合わせではなく、目を剥いた形相は恐ろしいばかり。しかし、どう見ても、この狛犬はうつむいています。赤い眼は怒りの表情ではなく、涙をこらえている様子。両の前足を突っ張り、悲しみの表情で項垂れた狛犬です。
7人の戦死者の名が刻まれた慰霊碑の前に立てば、狛犬だって膝を折り頭を垂れるのです。
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