「金貸水神」を訪ねる①―天竜川の崖の上
時は明応八年(一五〇〇)八月のことである。
遠江の国は、その日朝から雨であった。雨は時がたつにつれてますます激しく降りしきり、やがて天竜川が増水し始めた。
鹿島の川岸におまつりされている水神さまのお社にも、もうすぐ水が押し寄せてきそうであった。
雨は台地をは激しくたたき、とうとう天竜川は氾らんした。川岸の水神さまも、もはや濁流に飲まれる運命か・・・・・・。
しかしその時、近くに住む船頭の権三郎が、村人と共にかけつけてきた。水神さまは、すでに流され始めていた。権三郎は我を忘れて濁流に飛びこみ、泥水にまみれながら水神さまのご神体を、しっかりと抱いて避難した。
見ていた村人たちは、安堵の胸をなでおろし、
「権三郎どん、よくぞ水神さまを助けて下されたのう。」
と、口々に言いあった。
権三郎はずぶぬれて、夏だというのに、体の芯なで冷えきっていた。
やがて権三郎は村人たちと一緒に、天竜川の崖の上の岩場に小さな祠を作って、水神さまをおまつりした。
「ここなら大水が出ても、流されることはあるまいて。」
みんなはそう言いあって、安心した。(「ふるさとものがたり天竜・第1章二俣地区」より一部引用)
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「金貸水神」があるのは、県道9号沿い「納涼亭」の南。岩場の上に祀られているのが「金貸水神」の社です。ここまでが、「金貸水神」の前半。さて、お話の続きはどうなるのでしょうか?
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