「扇の三ツ」は日の丸の扇、「湯戸の三ツ」は湯戸(小桶)、「ボーズカの三ツ」は八刀(やち)とも呼ばれる木剣に五色紙の飾りをつけたもの、「八千代の三ツ」は木剣を左手に、右手には鈴を持って舞います。
伊勢の国の高天原が・・・、伊勢の国の二見が浦で・・・。
太鼓と笛の音が一段と高く響くのに合わせ、右へ左へと舞処の四隅に飛び跳ねますが、合図の掛け声は「テホヘ」「マエヘ」「モドレ」。動作は繰り返しですが、どの順で舞われているのかは分かりません。この長く単調な舞を、小4から中3までの子どもたちはどうやって覚えるのでしょうか?
湯釜の湯は煮えたぎり、釜から上がる水蒸気が天蓋や湯蓋の飾りを激しく揺らします。
この暗号のような不思議なリズムと旋律は、私たちの日常とはかけ離れています。ましてや、現代の音楽やゲーム感覚とは大きく異なっていますので、舞手である子どもたちの感性とはさらに遠い世界観。そんな伝統や文化に触れて育つことができるのは、子どもたちにとって幸せでないはずがありません。
日はとっぷりと暮れ、炎と照明とに照らされた舞処の周りには、子どもたちの舞を見るために訪れた家族や友人たちの顔、顔、顔。舞が終わる度に、大きな拍手が湧き上がり、夜は次第に更けて行きました。