峰之沢鉱山の遺構を訪ねる⑯―書き込みのある古い絵葉書「峰之澤鑛山全景」
佐口行正さんからお借りした「峰之澤鑛山全景」の古い絵葉書は、小川一眞印行。前回にも紹介した通り、小川一眞とは万延元年(1860)に生まれで、昭和4年(1929)に没した写真師。日本で最初に写真製版を実用化した、日本写真史にその名を残す人物です。
同じ写真を使い、1枚に印刷したものと、2枚つながりの「其一」「其二」の計3枚です。2枚つながりのものには、赤インクで書き込みがありました。その文字を読んでみると・・・。
1.第一合宿所
2.事ム所
3.採鉱係
4.供給所(食料品)
5.第二合宿所
6.鉱石選鉱場
7.船積場
他ハ役宅及長屋(鉱夫)
此線天竜川水面ヨリ千尺ノ所(高根山ノ約三四倍)
山神社
△ノ内ノ黒イ所ハ坑口
天龍川→←
おそらくは、鉱山に関わっていた人による書き込みのはず。写真に写る峰之沢を詳細に説明してあります。「△ノ内ノ黒イ所ハ坑口」とされる坑口は3ヵ所。「第一」と「第二」の「合宿所」は単身者用の宿泊施設であろうと思います。「山神社」とは林業に関わるものではなく、鉱山労働の安全を祈願する神社。
インクラインにより下ろされた鉱石は、索道により天竜川を横切り、対岸の「船積場」から帆掛け船に載せられて川下へと運ばれたようです。
目にすることの少ない峰之沢鉱山の古い写真。しかも全景写真に詳細な説明がつき、一層貴重な資料となっています。
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