津倉家住宅の北西角にはみ出すように造られた茶室にも、独特な風情が漂っています。
先ずは、廊下側の壁に造られた丸窓。窓にはガラスが嵌め込まれ、丸窓を満月に見立て、ウサギが浮き上がって見えます。おそらく、周りをエッチング手法によりつや消しにし、ウサギの姿を描いたもの。ウサギの体にもぼかしが入れられ、まったくの透明ではありません。
なるほど、つまり、この丸窓は満月の形。満月にウサギの絵柄ということでしょう。この手法にも興味が湧きますが、このガラスの丸い形も気になります。
丸い窓と言えば、船に設けられたスカッツル(丸窓)を思い出します。船の窓が丸いのは、水に濡れたり乾いたりする時に縮んだり伸びたりする応力に耐えるため。四角いガラスよりも丸いガラスの方が周囲から均等に力が加わるため、割れにくくて強いのです。
湊町として繁栄した掛塚には船大工もおおぜいいて、造船工場もありました。江戸時代の和船から洋式帆船や蒸気船を造るようになれば、スカッツルに嵌められる丸ガラスもあったはず。
実は、このガラスは四角で窓枠で丸く見えるようにしているだけなのですが、廻船問屋だった津倉家の茶室の丸窓を見て、船のスカッツルを思い出してしまうのは、考え過ぎでしょうか?