佐久間町立原(たっぱら)は、秋葉道・塩の道に沿った山の集落です。路傍に立つ馬頭観音は、文字通り馬の顔だけ。実際には前脚と思われるものも彫られてはいるのですが、観世音菩薩の造形がありません。
つい最近まで、馬は私たちのすぐそばで飼われていました。田や畑での農作業を助けたり、荷物の運搬をしたり、家族の一員として頼りにされていました。
もしも、病気で寿命を全うできずに死別すれば、人間並みに葬儀を営み、老馬になれば泣く泣く生き別れをすることもありました。人々にとって馬頭観音は、仏教本来の観世音菩薩ではなく、道に生き道に死んだ家族との別れのモニュメント。この馬の顔だけを刻んだ馬頭観音を見れば、愛馬の供養のために建てたものだとよく分かります。
同じ佐久間の中部(なかべ)には、馬の姿を浮彫りにした馬頭観音もあります。