青谷ではすでに田植えが済んだ田んぼがあります。
以前、地元の人から聞いた話によれば、その昔、青谷には田んぼがありませんでした。
現在の青谷の集落は、山と山とに囲まれた狭隘な地ですが、「青谷不動の滝」に続く沢の両側に、狭いながらも田んぼがあります。実は、これは山の土ではなく、豊岡村(現在の磐田市)から運ばれた土とのこと。
江戸時代に田を作ろうとして、豊岡の人たちが1杯幾らで土を背負って来て、松の木を伐って埋めた上に土を乗せ、棚田のように段々の田んぼを造成したのだそうです。
それまでの青谷の農家では狭い畑と養蚕だけ。何年もかけて人力で土を運んで田を作り、ようやく稲作ができるようになったのですが、「そんな苦労を知らん奴ばかり。今じゃ、田んぼに入るのは人間じゃなくてイノシシばっか」とのこと。
かつての養蚕を伝える農業遺産の桑の木に、赤い実が生っていました。