内山真龍資料館で見た引き札①―蠶卵製造販賣所
以前(2015年)、浜松市天竜区大谷にある内山真龍資料館で開催された常設展Ⅲ「宮沢家文書 その2」(~3月22日)に展示されていた明治時代の引き札の中に「蠶卵製造販賣所 サス小商店」のものが2枚。ありました。
「サス」は商人や農民が名乗ることを禁じられていた名字に代わり、人別判別のために名乗っていた称号の1つ。かつての掛塚にあった「サス中」松下商店の屋号と同じように、2本の直線を山のように交差し、その下に、名字の1字である「小」を組み合わせています。
横長に刷られている単色の引き札には「紀元二千五百五十三年」とあり明治26年(1893)、縦長のものは「神武天皇即位紀元二千五百五十二年」であり、同25年(1892)のもの。
「蠶卵製造販賣所」の「蠶」の字は「蚕」の旧字ですから、現代風に書き直せば「蚕卵製造販売所」となり、養蚕に使う蚕に「蚕種」とも呼ばれた卵を産ませ、卵が産み付けられた蚕種紙(さんしゅし)・ 蚕卵紙(さんらんし)を販売する商店です。
横長の引き札に描かれているのは、金庫を前に算盤を弾く大黒様と入金帳を開いてご満悦の恵比寿様。どうやら、儲かって儲かって笑いが止まらないようです。
横長の引き札に描かれているのは「蠶牛馬守護 保食大神(うけもちのおおかみ)」。聞き慣れない名前の「保食大神」とは養蚕の神様らしく、右手には稲穂を持ち、左手には蚕の餌になる桑の枝を持っています。
その下に描かれているのは、孵化したばかりの蚕に桑の葉をあげているところ。北遠の養蚕は、卵を産ませるところから始めていたことがよく分かりました。
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