「花咲乃庄」には土蔵が2棟あります。大箸家の住宅や土蔵などの建造物7件すべてが国の登録有形文化財。2棟の土蔵は一見よく見る漆喰壁の蔵ですが、蔵の入口が前に迫り出した構造をしています。
この迫り出しについて、蔵の入口に張り出された「古人の知恵」には、次のような解説が書いてありました。
<構造>蔵本体の前室(エアルーム)があり床にはスノコが備えられ床下から冷気が上がる。
<蔵の入り方>前室(エアルーム)の三重の戸を開き入室後入口を閉め、床下から上る冷気で体のチリを落し、蔵の入口を開き中へ入る。
つまり、日本酒の発酵醸造には天然酵母を使います。そこには、雑菌やカビなどを侵入させるわけにはいきません。それを防ぐ知恵が、外からの菌の持込を極力防ぐためのエアルーム。「花咲乃庄」の土蔵の特異な入口前室は、酒蔵ならではの工夫だったのです。